🇦🇪 ドバイ在住/「元手0からFIREを実現」
元公立中学校教師 中野和幸

DePINという言葉を最近見るけれど、結局何のことなの?

暗号資産と通信や電力が、どうして関係するの?

DePINは難しい専門用語に見えますが、本質は“世界中の人や企業でインフラを支える仕組み”です。順番に見れば初心者の方でも理解できます。
AIという言葉を聞かない日は、ほとんどなくなりました。
ChatGPTのような生成AIだけではなく、企業の業務、自動運転、医療、金融、物流など、AIは社会のあらゆる分野へ入り始めています。
ただ、ここで一つ見落とされやすいことがあります。
AIは、ソフトウェアだけでは動きません。
AIを動かすためには、大量の計算を行うコンピューター、データを保存する場所、世界中へ情報を届ける通信回線、そしてそれらを支える電力が必要です。
つまり、AI革命とは単に便利なサービスが増える変化ではなく、社会インフラそのものを作り直していく大きな変化でもあるということです。
そして、その流れの中で注目されているのがDePIN(ディーピン)です。
DePINは、日本語では「分散型物理インフラネットワーク」と呼ばれます。
名前だけを見ると難しく感じるかもしれませんが、本質はそれほど複雑ではありません。
これまで一部の大企業が巨額の資金を投じて整備してきた通信、計算能力、データ保存、電力などのインフラを、世界中の個人や企業が少しずつ提供し合い、一つの大きなネットワークとして機能させようという考え方です。
僕がDePINに注目している理由は、単に新しい暗号資産のテーマだからではありません。
これまで暗号資産は、「価格が上がるのか」「どの銘柄が注目されているのか」という投資対象として語られることが多くありました。
しかしDePINでは、ブロックチェーンが現実社会の通信やデータ保存、計算能力と結びつき、実際のサービスを動かすために使われ始めているという点が重要です。
ここから先は、難しい専門用語をできるだけ使わずに、DePINとは何なのか、従来のインフラと何が違うのか、そしてなぜAI時代に注目されているのかを順番に見ていきます。
ここからは動画で扱いきれなかった部分も含めて、DePINの仕組みを体系的に解説します。
- DePINとは何か|分散型物理インフラを3分で理解する
- なぜ今DePINが注目されているのか|最大の理由はAI需要
- DePINの代表例|Heliumで分かる「分散型通信」の仕組み
- DePINで最も重要なのは「トークン価格」ではなく実需
- DePINとAIエージェントはなぜ相性がいいのか
- Filecoinに見る分散型ストレージ|データ保存もDePIN化する
- DePINを社会インフラにするためにブロックチェーン高速化が必要な理由
- Solanaの高速化から見るDePIN時代のブロックチェーン競争
- DePINプロジェクトを見極める5つのチェックポイント
- DePINにはどのようなリスクがあるのか
- DePINは暗号資産を「投機」から「社会インフラ」へ変えるのか
- まとめ|DePINを見るなら価格ではなく「実際に使われているか」を見る
- 「AI時代の資産形成をさらに学ぶ」
DePINとは何か|分散型物理インフラを3分で理解する

DePINという言葉を初めて見た方は、「暗号資産の新しいジャンルなのかな」と感じるかもしれません。
しかし、本質はそれほど狭いものではありません。
DePINは、これまで一部の大企業や大規模事業者が整備してきた通信、データ保存、計算能力、電力などの物理インフラを、世界中の個人や企業が分散して提供し、ブロックチェーンによって一つのネットワークとして管理する仕組みです。
つまり、暗号資産そのものが主役なのではなく、現実社会で使われる設備やサービスが主役です。
そして、誰がどれだけ設備を提供したのか、実際にどれだけ利用されたのか、どのように対価を分配するのかという部分を、ブロックチェーンやトークンによって効率化しようとしているわけです。
まずは難しい専門用語に入る前に、DePINという仕組みを「誰が設備を持つのか」「どうやって利用状況を記録するのか」「なぜトークンが使われるのか」という順番で整理していきましょう。
DePINの正式名称「Decentralized Physical Infrastructure Networks」とは
DePINは「Decentralized Physical Infrastructure Networks」の頭文字を取った言葉で、日本語では一般的に分散型物理インフラネットワークと訳されます。
言葉を一つずつ分解すると、意味はかなり分かりやすくなります。
「Decentralized」は、一つの企業や管理者だけに集中させず、複数の参加者へ分散させるという意味です。
「Physical Infrastructure」は、通信基地局、サーバー、ストレージ、センサー、電力設備など、現実世界に存在する設備を指します。
そして「Networks」は、それらを一つのネットワークとしてつなぐという意味です。
つまりDePINとは、世界中に点在している物理設備を、多くの参加者が分散して提供し、それらを一つのサービスとして機能させる仕組みだと考えると理解しやすいでしょう。
ここで重要なのは、DePINが単なるデジタル上の仕組みではないということです。
ブロックチェーンというデジタル技術を使いながらも、その先にあるのは通信、データ保存、計算能力、電力といった現実社会のインフラです。
だからこそ僕は、DePINを「暗号資産の新しい流行」として見るよりも、ブロックチェーンが現実社会へ入り始めた一つの具体例として見る方が本質に近いと考えています。
従来の社会インフラとDePINは何が違うのか
従来の社会インフラは、基本的に一つの企業や組織が巨額の資金を投じて設備を整備し、管理する形が中心でした。
例えば通信会社であれば、土地を確保し、基地局を建設し、通信設備を設置し、その後の保守管理まで自社で行います。
この方法は非常に安定していますが、一方で、設備投資に莫大な費用と時間がかかります。
DePINでは、この考え方を変えます。
一つの企業がすべての設備を所有するのではなく、世界中の個人や企業が小さな設備や余っている資源を提供し、それらをネットワークとしてつなぐという発想です。
例えば、ある地域で通信設備が不足している場合、一つの通信会社が大規模基地局を新設するのではなく、その地域の店舗や個人が小型の通信設備を設置し、全体として通信網を補うという形です。
もちろん、DePINが従来型インフラをすべて置き換えるわけではありません。
大規模設備の方が効率的な分野もありますし、中央管理の方が安全性や品質を維持しやすい場合もあります。
重要なのは、従来型かDePINかという二者択一ではなく、分散した方が効率的な場所ではDePINという新しい選択肢が生まれているということです。
通信・計算能力・ストレージ・電力を世界中で持ち寄る仕組み
DePINで提供できるものは、通信設備だけではありません。
代表的なものとして、通信、計算能力、ストレージ、電力などがあります。
通信であれば、小型アンテナや無線設備を設置してネットワークへ参加できます。
計算能力であれば、GPUやサーバーなどの処理能力を提供できます。
ストレージであれば、使われていない保存容量をネットワークへ提供することができます。
さらに電力分野では、太陽光発電や蓄電池、余剰電力などをネットワーク化する考え方もあります。
例えば、ある企業が夜間ほとんど使っていないサーバーを持っていたとします。
その計算能力を必要としている別の企業やAIサービスへ提供できれば、これまで眠っていた設備が新しい価値を生みます。
家庭や事業所で余っている保存容量や電力についても、同じ考え方ができます。
つまりDePINの大きな特徴は、世界中にすでに存在しているけれど十分に活用されていない資源を、必要としている人へつなぐことです。
AI時代になり、計算能力やデータ保存、通信、電力の需要が増えれば増えるほど、この「余っている資源をつなぐ」という発想は重要になっていく可能性があります。

なぜブロックチェーンが必要なのか
ここで多くの方が疑問に思うのが、「それなら普通のインターネットサービスでもできるのではないか」という点です。
これは非常に大切な疑問です。
実際、すべてのDePINにブロックチェーンが必要とは限りません。
一つの企業がすべての利用者と設備提供者を管理できるのであれば、従来型のデータベースを使った方が安くて速い場合もあります。
それでもDePINでブロックチェーンが使われる理由は、世界中の知らない参加者同士を、一つの中央管理者だけに頼らずつなぐ必要があるからです。
例えば、誰がどれだけ通信設備を提供したのか、どれだけデータが保存されたのか、どれだけ計算処理を行ったのかという記録を残す必要があります。
さらに、その利用実績に応じて報酬を分配する必要もあります。
ブロックチェーンを使えば、こうした利用記録や支払いルールを複数の参加者で共有し、一定のルールに基づいて自動的に処理することができます。
特にスマートコントラクトを利用すれば、「この条件を満たしたら、この金額を支払う」という契約をプログラムとして実行できます。
つまりブロックチェーンの役割は、単に暗号資産を発行することではありません。
世界中の設備提供者と利用者をつなぎ、利用記録、契約、支払いを一つの仕組みとして動かすための共通基盤として使われているのです。
トークンはDePINの中でどのような役割を持つのか
DePINを理解するうえで、もう一つ欠かせないのがトークンです。
トークンとは、ブロックチェーン上で発行されるデジタルな権利やポイントのようなものです。
DePINでは、ネットワークへ設備や資源を提供した参加者に対して、トークンを報酬として配る仕組みが使われることがあります。
例えば、通信設備を設置した人、ストレージを提供した人、計算能力を提供した人などへ、利用実績に応じてトークンを分配するという形です。
この仕組みには大きなメリットがあります。
新しいネットワークを立ち上げる初期段階では、まだ利用者も売上も十分ではありません。
そこでトークンをインセンティブとして使うことで、設備を提供する人を集め、ネットワークを早く拡大することができます。
ただし、ここには大きな注意点があります。
トークンを配ること自体が事業の目的になってはいけません。
トークン報酬によって設備だけが増えても、実際にその通信やストレージ、計算能力を利用する人がいなければ、本当の売上は生まれません。
長期的に重要なのは、利用者がサービスへ料金を支払い、その売上の一部が設備提供者へ還元されるという経済循環です。
だから僕は、DePINを見るときにトークン価格だけを見るのではなく、実際の利用量、利用料金、ネットワーク売上、そしてトークン報酬への依存度を見ることが大切だと考えています。
DePINが本当の社会インフラとして成長できるかどうかは、どれだけトークンが配られたかではなく、どれだけ現実社会で使われたかによって決まります。

DePINの仕組みが分かると、次は「なぜ今、注目されているのか」です。僕は、その大きな理由の一つがAIの急速な普及だと考えています。次はAIとDePINの関係を見ていきましょう。
なぜ今DePINが注目されているのか|最大の理由はAI需要

DePINが注目されている最大の理由の一つが、AIの急速な普及によって社会インフラへの需要が一気に高まっていることです。
AIは、画面上では文章を作ったり画像を生成したりする便利なサービスに見えますが、その裏側では膨大な計算処理が行われています。
その計算を支えるGPUやサーバー、学習データや生成データを保存するストレージ、世界中へ情報を届ける通信回線、そしてすべての設備を動かす電力が必要です。
つまり、AIが普及すればするほど、必要になるのはAIサービスだけではありません。
そのAIを支える計算能力・データ保存・通信・電力そのものです。
そして、この需要増加に対して、従来の巨大データセンターや一部のクラウド企業だけですべてを支えるのではなく、世界中にある未使用の設備や余剰資源をつなげて活用しようという考え方がDePINです。
ここからは、AI需要がなぜDePINと結びつくのかを、計算能力、ストレージ、通信、電力という4つの視点から順番に整理していきます。
AIが普及するほど計算能力が必要になる
AIを動かすうえで、最も分かりやすく不足しやすい資源の一つが計算能力です。
生成AIは、人間のように文章を考えているわけではありません。
裏側では膨大なデータを読み込み、非常に多くの計算を短時間で繰り返しながら、次にどの言葉や画像が最も適切なのかを判断しています。
その処理を支える代表的な部品がGPU(ジーピーユー)です。
GPUは、もともとゲームや映像処理のために発達した部品ですが、大量の計算を同時に処理することが得意なため、現在ではAIの学習や推論でも重要な役割を担っています。
特に高度なAIモデルになるほど、一つの質問に答えるだけでも多くの計算資源を必要とします。
さらに、AIを開発する企業が増え、利用者が増え、AIエージェントのように24時間自動で動くAIが普及すれば、必要な計算量はさらに大きくなります。
ここで重要なのは、AI向けGPUが高性能だから価値があるという話だけではありません。
本当に重要なのは、必要な時に必要な計算能力を、適切な価格で確保できるかということです。
大規模クラウド企業だけに需要が集中すると、利用料金が上がったり、必要なGPUをすぐに確保できなかったりする問題も起こりやすくなります。
そこで、世界中に存在する未使用のGPUやサーバー能力をネットワーク化し、必要な人へ提供するというDePIN型の考え方に注目が集まっています。
AI時代では、計算能力そのものが一種のインフラになります。
だからこそ、DePINを見る際には「どのトークンが人気か」ではなく、実際に計算能力を必要としている利用者が存在するのか、その需要と供給を効率よく結びつけられているのかを見ることが重要です。
AI時代にデータ保存容量が不足しやすくなる理由
AIの成長によって必要になるのは、計算能力だけではありません。
同時に重要になるのがデータを保存するストレージです。
AIは大量の情報を学習し、その情報をもとに文章や画像、動画、音声などを生成します。
つまり、AIが発達するほど、学習に使うデータも増え、生成されたデータも増えていきます。
例えば、企業がAIを業務に導入すれば、社内文書、顧客データ、画像、動画、分析結果など、これまで以上に多くのデータを保存する必要が出てきます。
さらに、AIエージェントが自動的に仕事をするようになれば、そのAIが作成した履歴、判断データ、処理結果なども蓄積されていきます。
こうしたデータ量の増加に対して、すべてを一部の巨大クラウド事業者へ保存し続ける方法だけで十分なのかという問題が出てきます。
もちろん、大手クラウド企業のサービスは非常に便利で信頼性も高いです。
ただし、利用料金、障害時の影響、特定企業への依存、保存場所の集中といった課題もあります。
そこで注目されるのが、世界中に存在する余っているストレージ容量をネットワークとして活用する考え方です。
個人や企業が使っていない保存容量を提供し、必要としている利用者がそこへデータを保存する仕組みが成立すれば、ストレージそのものを分散型インフラとして活用することができます。
DePINのストレージ分野を見るときに大切なのは、保存容量がどれだけ多いかではありません。
実際にどれだけのデータが保存され、継続的に利用され、その利用に対して料金が発生しているかです。
AI時代ではデータ量そのものが増え続けるため、ストレージ需要は長期的に重要なテーマになる可能性があります。
通信回線がAIインフラの重要資源になる
AIは、計算して終わりではありません。
計算した結果を利用者へ届け、必要なデータを世界中から受け取り続ける必要があります。
そのため、通信回線もAI時代の重要なインフラになります。
例えば、スマートフォンでAIを使う時、画面上では数秒で答えが返ってきます。
しかしその裏側では、利用者の質問が通信回線を通ってデータセンターへ送られ、AIが計算した結果が再び通信回線を通ってスマートフォンへ戻ってきています。
AIサービスが増えれば増えるほど、送受信されるデータ量も増えます。
さらに、自動運転車、ロボット、IoT機器、AIカメラ、スマートシティなどが普及すれば、人間だけではなく機械同士が常にデータをやり取りするようになります。
IoTとは、センサーや家電、車、機械などがインターネットにつながり、自動で情報を送受信する仕組みです。
この世界では、通信が少し遅れただけでもサービス品質に大きな影響が出る場合があります。
自動運転車や産業用ロボットでは、通信の遅れが安全性に直結する可能性もあります。
だからAI時代では、単にインターネットにつながればいいという話ではなく、高速で安定した通信を、必要な場所へ細かく届けることが重要になります。
ここでDePIN型の通信ネットワークが注目されます。
巨大な基地局だけでは十分にカバーしにくい地域を、小型の通信設備を分散して配置することで補完できれば、従来型ネットワークと組み合わせて通信インフラ全体を強化できる可能性があります。
AI時代の通信を見る時は、通信会社だけを見るのではなく、その裏側でどのような設備が必要になり、どの場所に需要が生まれるのかまで見ることが重要です。
AIデータセンターが大量の電力を必要とする理由
AIインフラを考えるうえで、最後まで避けて通れないのが電力です。
どれだけ高性能なGPUを用意しても、どれだけ大きなデータセンターを建設しても、電気がなければ動きません。
しかも、AI向けの計算処理は非常に多くの電力を必要とします。
AIモデルの学習では、大量のGPUを長時間動かす必要があります。
さらに、AIサービスは一度学習したら終わりではありません。
世界中の利用者が24時間アクセスするため、そのたびに推論と呼ばれる計算処理が発生します。
推論とは、学習済みのAIが実際の質問や指示に対して答えを出す処理のことです。
そして、電力を消費するのはGPUだけではありません。
大量のサーバーが発生させる熱を冷やすための冷却設備、ネットワーク機器、データ保存装置、非常用電源なども必要です。
つまり、AIデータセンターは一つの巨大なコンピューター工場のようなものです。
AI需要が拡大すれば、データセンター建設だけでなく、発電設備、送電網、蓄電池、再生可能エネルギー、冷却設備など、周辺インフラへの需要も連鎖的に増える可能性があります。
ここでDePINとの接点が生まれます。
例えば地域ごとに余っている電力や蓄電能力をネットワーク化し、必要な場所へ効率的に活用できれば、従来とは異なるエネルギーインフラの形が生まれる可能性があります。
もちろん、電力は安全性や規制が非常に重要な分野なので、単純にすべてを分散化できるわけではありません。
それでも、AI需要の拡大によって電力がデジタル経済を支える最重要資源の一つになっていることは、DePINを理解するうえで欠かせない視点です。
眠っている計算資源や設備を活用するDePINの発想
DePINの面白さは、新しい設備をゼロから大量に作ることだけにありません。
すでに世界中に存在している、使われていない資源を活用できる可能性にあります。
例えば、企業のサーバーは24時間常に100%使われているとは限りません。
家庭や事業所のストレージにも空き容量があります。
太陽光発電では、発電したもののその時間帯には使い切れず、余剰電力が生まれることもあります。
通信設備についても、地域や時間帯によって利用率に差があります。
従来であれば、こうした余っている資源は、その所有者の中だけで完結していました。
しかしDePINでは、それらをネットワークへ接続し、必要としている人へ提供するという考え方を取ります。
分かりやすく言えば、ホテルの空室や使われていない車をシェアリングサービスによって活用する考え方を、計算能力やストレージ、通信、電力へ広げたようなものです。
ただし、DePINでは世界中の参加者が関わるため、「誰がどれだけ提供したのか」「本当にサービスが提供されたのか」「誰にいくら支払うのか」という問題が出てきます。
そこでブロックチェーンやスマートコントラクトを使い、利用記録や支払いを自動化しようとするわけです。
僕がDePINを見る時に重要だと考えているのは、設備を増やすことそのものではありません。

AI需要とDePINがつながる理由が見えてきましたね。では、この仕組みは実際にどう動いているのでしょうか。次は通信分野の代表例、Helium(ヘリウム)から具体的に見ていきましょう。
DePINの代表例|Heliumで分かる「分散型通信」の仕組み

DePINの仕組みを具体的に理解するには、実際に動いているプロジェクトを見るのが一番分かりやすいでしょう。
その代表例の一つが、通信分野のHelium(ヘリウム)です。
従来のモバイル通信では、大手通信会社が基地局を整備し、自社で通信網を構築する方法が一般的でした。これに対してHeliumは、個人や店舗、企業などが小型の通信設備を設置し、それらをネットワークとしてつなぐことで通信エリアを広げようとしています。
ただし、Heliumを見るうえで本当に重要なのは、「個人でも通信設備を設置できる」という部分だけではありません。
DePINが社会インフラとして成立するためには、設備の数を増やすだけではなく、実際に通信が行われ、利用者や通信事業者から需要が生まれ、その利用が経済価値につながることが必要です。
Heliumが近年進めている仕組みの変化を見ると、DePINが「トークンを配ってネットワークを拡大する段階」から、「実際に使われるインフラを作る段階」へ進もうとしていることが見えてきます。
ここからは、Heliumの仕組みを通して、DePINにおける「設備」「需要」「実需」の関係を具体的に見ていきましょう。
Heliumとは何か|個人や店舗が通信網を支える仕組み
Helium(ヘリウム)は、個人や店舗、企業などが通信設備を設置し、それらをネットワークとしてつなぐことで、分散型の無線通信網を構築するプロジェクトです。
従来の通信インフラでは、通信会社が基地局を建設し、設備投資から保守管理までを担う方法が基本でした。Heliumでは、この通信インフラの一部を多くの参加者が分散して支えるという発想を取ります。
例えば、ある店舗が小型の通信設備を設置し、その設備を通して利用者の通信が行われれば、その店舗がネットワークの一部として機能します。
一台の設備だけでは小さな通信範囲しか作れなくても、街のさまざまな場所に設備が配置され、それぞれが連携すれば、全体として広い通信ネットワークを形成できます。
これは、一つの企業が巨大な設備をすべて所有する従来型とは異なる考え方です。
もちろん、Heliumが既存の大手通信会社をそのまま置き換えるという意味ではありません。むしろ注目すべきなのは、既存の通信網だけではカバーしにくい場所や、通信需要が集中する場所を分散した小型設備によって補完できる可能性です。
この「大きなインフラを一社だけで作るのではなく、多くの参加者が小さな設備を持ち寄って支える」という構造が、DePINを理解するうえで非常に分かりやすい事例になっています。
従来の基地局中心の通信網と何が違うのか
従来の携帯電話ネットワークでは、通信会社が基地局を設置し、その基地局から電波を飛ばして広いエリアをカバーします。
安定した通信サービスを提供するには非常に合理的な方法ですが、基地局の建設には土地、設備、電力、工事、保守など多くのコストが必要です。
また、すべての場所に同じ密度で基地局を設置することは現実的ではありません。地域によって利用者数や通信需要が異なるため、「ここだけもう少し通信能力を増やしたい」という細かな需要への対応には時間や費用がかかる場合があります。
DePIN型の通信では、ここに別の選択肢を加えます。
個人や店舗などが小型の通信設備を設置し、必要な場所へ通信能力を細かく追加していくという考え方です。
分かりやすく言えば、従来型が「大きな街灯を通信会社が計画的に設置して街全体を照らす仕組み」だとすれば、DePIN型は「必要な場所へ小さな照明を追加して、暗い場所を補っていく仕組み」に近いでしょう。
重要なのは、どちらか一方だけが正しいという話ではありません。
既存の通信会社が持つ大規模で安定したネットワークと、DePINが持つ柔軟な分散型設備を組み合わせることで、通信需要に応じてインフラを補完する新しい形が生まれる可能性があります。
Expansion Zonesとは|必要な場所へ設備を増やす考え方
分散型の通信ネットワークには、一つ大きな課題があります。
誰でも自由に通信設備を設置できても、実際に通信需要がない場所へ設備ばかり増えてしまえば、社会インフラとしては効率的ではありません。
そこでHeliumが進めている考え方の一つが、**Expansion Zones(エクスパンション・ゾーンズ)**です。
簡単に言えば、通信事業者側が「この地域では通信能力をもっと増やしたい」という場所を示し、設備提供者が需要のある地域を把握しやすくする仕組みです。
これはDePINにとって非常に重要な変化です。
初期のネットワークでは、「設備を増やすこと」そのものが成長の指標になりやすい傾向があります。しかし、本当に必要なのは設備の数ではなく、必要な場所に必要な設備があることです。
例えば、利用者がほとんどいない地域に100台の設備を設置するよりも、通信需要が高いのに電波が不足している場所へ10台設置した方が、社会インフラとしての価値は高くなる可能性があります。
Expansion Zonesの本質は、単なる地図上のエリア指定ではありません。
「設備を増やす」から「需要のある場所へ設備を増やす」へ発想を変える仕組みだと考えると、DePINの進化が分かりやすくなります。

「設置すれば報酬」から「実際に使われる設備」重視へ
DePINの初期段階では、ネットワークを早く広げるために、設備を設置した参加者へトークンなどの報酬を与える方法が使われることがあります。
まだ利用者が少ない段階でも、先に設備を増やさなければサービスそのものを提供できないため、初期のネットワーク形成には合理的な仕組みです。
しかし、この方法だけを長期間続けると問題が生まれます。
実際にはほとんど利用されていない設備でも、設置しているだけで報酬が得られるのであれば、参加者の目的が「通信サービスを提供すること」ではなく「報酬を受け取ること」になってしまう可能性があるからです。
そこで重要になるのが、実際に通信を運び、利用された設備をより評価する仕組みへの移行です。
Heliumでも、単に設備を置くことだけではなく、実際の通信需要やデータ利用をより重視する方向へネットワーク設計が進んでいます。
これは一般的なビジネスで考えれば、とても自然なことです。
お店を建てただけでは売上は生まれません。実際にお客様が来店し、商品やサービスを利用して料金を支払って、初めて事業として成立します。
DePINも同じです。
「設備が存在すること」から「設備が実際に使われること」へ。
この変化は、DePINがトークン報酬を中心としたネットワークから、現実の需要を持つ社会インフラへ成長できるかを考えるうえで、非常に重要なポイントです。
Heliumの事例から見えるDePIN成功の条件
Heliumの事例から見えてくるDePIN成功の条件は、単純に「参加者を増やすこと」ではありません。
重要なのは、設備の供給と現実の需要が結びついているかです。
設備が増える。
通信エリアが広がる。
実際の利用者や通信事業者がそのネットワークを使う。
利用料金が発生する。
その収益が設備提供者やネットワークの維持へ循環する。
この流れが継続して初めて、DePINは持続可能な社会インフラへ近づいていきます。
逆に、設備の数や参加者数だけが増えても、利用者が増えず、トークンを新しく発行して報酬を支払い続けなければネットワークを維持できないのであれば、長期的な持続性には疑問が残ります。
だから僕は、DePINを見るときにトークン価格、設備台数、参加者数だけで判断しないことが重要だと考えています。
実際の通信量は増えているのか。
料金を支払って利用する需要があるのか。
ネットワークとして売上が生まれているのか。
設備を維持するコストに対して十分な経済価値を生み出せているのか。
こうした現実の数字を見る必要があります。
これはHeliumだけに当てはまる話ではありません。
計算能力を提供するDePINなら「実際にどれだけ計算能力が購入されたか」、ストレージなら「実際にどれだけデータが保存されたか」、電力なら「実際にどれだけエネルギーが利用されたか」が重要になります。
DePINの本当の価値は、どれだけ設備を集めたかではなく、集めた設備によってどれだけ現実の需要を満たしたかで決まる。
Heliumは、このDePINの本質を理解するための非常に分かりやすい事例なのです。

Heliumを見ると、設備の数だけでは本当の価値を判断できないことが分かりますね。次は一歩踏み込んで、DePINを見るうえで最も重要な「実需」について考えていきましょう。
DePINで最も重要なのは「トークン価格」ではなく実需

DePINを投資対象として見始めると、どうしてもトークン価格の上昇や時価総額、参加者数などに目が向きやすくなります。
しかし、DePINが一時的な暗号資産のテーマで終わるのか、それとも長期的な社会インフラとして定着するのかを考えるなら、僕はもっと重要なものを見る必要があると考えています。
それが実需です。
通信なら、実際にそのネットワークを使って通信している人や企業がいるのか。ストレージなら、実際にデータを保存するために利用されているのか。計算資源なら、実際にGPUやサーバーの能力を必要として料金を支払う顧客がいるのか。
設備を増やすことと、事業が成長することは同じではありません。
トークン報酬によって設備提供者を集めることも、ネットワークの立ち上げ段階では重要です。しかし、最終的には利用者から生まれる売上によってネットワークが回る状態へ移行できなければ、持続可能な事業にはなりません。
ここからは、DePINを単なる暗号資産のテーマではなく「事業」として見るために、どの数字や構造を確認すればよいのかを一段深く整理していきます。
設備の数が多いだけではDePINは成功とは言えない
DePINのプロジェクトを見ると、「世界中に○万台の設備が設置された」「○か国までネットワークが拡大した」といった数字が紹介されることがあります。
もちろん、ネットワークの規模を知るうえでは重要な数字です。
しかし、設備数が多いことと、そのDePINが事業として成功していることは同じではありません。
例えば、ある通信DePINに10万台の通信設備が設置されていたとしても、その大部分がほとんど使われていなければ、社会インフラとして生み出している価値は限定的です。
これはホテルで考えると分かりやすいでしょう。
1万室を持つ巨大ホテルがあったとしても、毎日100室しか利用されていなければ、「1万室ある」という数字だけで事業の強さを判断することはできません。
重要なのは客室数だけではなく、稼働率です。
DePINも同じです。
通信設備なら、どれだけ実際のデータ通信を処理したのか。GPUなら、どれだけの時間その計算能力が利用されたのか。ストレージなら、提供可能な容量のうち、どれだけ実際にデータが保存されているのかを見る必要があります。
さらに、設備を増やせば維持費も発生します。
設置費用、電気代、通信費、修理費などを考えると、利用されない設備を大量に増やすことが、むしろネットワーク全体の非効率につながる場合もあります。
だからこそ、DePINでは「どれだけ大きいネットワークなのか」だけではなく、そのネットワークがどれだけ効率よく使われているのかを見ることが重要なのです。
実需とは何か|利用者が本当に料金を支払っているかを見る
投資の世界では「実需」という言葉がよく使われますが、難しく考える必要はありません。
実需とは簡単に言えば、そのサービスを本当に必要として、お金を支払って利用する人や企業がいる状態です。
例えば、通信DePINであれば、利用者や通信事業者が実際にその通信網を利用し、その対価として料金を支払っているかを見ることになります。
ストレージなら、企業や個人が本当にデータを預け、保存料金を支払っているのか。
計算資源なら、AI企業や開発者がGPUなどの計算能力を実際に借り、その利用料を支払っているのか。
ここで重要なのは、「無料なら使う人」と「お金を払ってでも使いたい人」を区別することです。
無料キャンペーンやトークン報酬によって利用者数を増やすことはできます。しかし、そのインセンティブがなくなった瞬間に利用者がいなくなるのであれば、本当の需要があるとは言いにくいでしょう。
これは一般企業を見る時も同じです。
商品を無料で配れば利用者数は増えますが、本当に強い事業かどうかを見るには、顧客がその商品やサービスへ継続的にお金を払う理由があるかを見る必要があります。
DePINでも、「利用者数」だけを見るのではなく、「有料利用がどれだけ生まれているのか」という視点が非常に重要になります。

トークン報酬と本当の売上を混同してはいけない理由
DePINを理解するうえで、特に注意したいのがトークン報酬と事業売上の違いです。
DePINでは、ネットワークの初期段階で設備提供者を集めるために、新しく発行したトークンを報酬として配ることがあります。
これはネットワークを立ち上げるためのインセンティブとして有効です。
しかし、ここで考えていただきたいことがあります。
新しいトークンを発行して参加者へ配ることと、外部の顧客がお金を支払ってサービスを利用することは、まったく意味が違います。
前者はネットワーク内部で作られた報酬です。
後者は、外部から入ってくる事業収益です。
例えば、ある店舗が独自ポイントを大量に発行し、スタッフへ配っていたとします。
ポイントを受け取った人は増えているので、一見すると活発な経済圏に見えるかもしれません。
しかし、お客様が商品を購入していなければ、店舗そのものには売上が入ってきません。
DePINも同じです。
トークン価格が上昇している間は、高い報酬を維持できる場合があります。しかし、トークン価格が下落した時にも設備提供者が残り、サービスが使われ、ネットワークを維持できるかが本当の勝負です。
だから僕は、DePINを見る際には**「誰が報酬を払っているのか」**を確認することが重要だと考えています。
新しいトークン発行によって支払われているのか。それとも、実際の利用者が支払った料金から生まれているのか。
この違いを理解するだけでも、DePINを見る視点はかなり変わります。
ネットワーク利用量と事業収益を見る
DePINを事業として評価するなら、設備数やトークン価格だけではなく、ネットワーク利用量と事業収益を見る必要があります。
通信DePINであれば、実際に処理されたデータ通信量や有料利用の増加が一つの指標になります。
ストレージなら、提供可能な総容量だけではなく、実際に利用されている保存容量や継続利用率を見る必要があります。
計算資源なら、GPUの台数だけではなく、実際に計算能力が利用された時間や、利用者が支払った料金を見ることが重要です。
さらに一段深く見るなら、売上だけではなく、その売上を生み出すためにどれだけのコストがかかっているのかも考える必要があります。
ネットワークの利用量が増えていても、それ以上のトークン報酬を配らなければ設備提供者を維持できないのであれば、事業として持続可能なのかを慎重に見る必要があります。
逆に、利用量が増えるほど売上が増え、その売上から設備提供者への対価やネットワーク運営費を賄えるようになれば、トークン価格だけに依存しない経済圏へ近づいていると考えることができます。
これは株式投資で企業を見る時に、株価だけではなく売上や利益、キャッシュフローを見ることに近い考え方です。
暗号資産だから特別なのではありません。
DePINが現実社会の事業を目指すのであれば、最終的には普通のビジネスと同じように「誰が利用し、誰がお金を払い、どれだけ利益を生み出せるのか」を見る必要があります。
「期待されているか」より「使われているか」が重要
暗号資産市場では、将来への期待が価格へ大きく反映されることがあります。
「大企業と提携した」
「新しい技術を発表した」
「有名な投資家が出資した」
こうしたニュースによって注目が集まり、トークン価格が上昇することもあります。
もちろん、提携や技術開発はプロジェクトの将来性を考えるうえで重要な材料です。
しかし、発表されたことと、実際に使われたことは別です。
例えば、大手企業との提携が発表されても、実証実験だけで終わる場合もあります。
新しいサービスが公開されても、実際の利用者が増えない場合もあります。
だからDePINでは、「将来使われそう」という期待だけではなく、「すでにどれだけ使われ始めているのか」を確認する視点が重要です。
これは、短期的な価格予想とはまったく違う考え方です。
価格は市場参加者の期待や心理によって大きく動きますが、実需は現実社会でサービスが必要とされている証拠です。
僕がDePINを長期的なテーマとして見るなら、ニュースの派手さよりも、利用者、利用量、売上が時間とともに積み上がっているかを重視します。
期待が先行して価格が動くことはあっても、長期的に社会インフラとして残るためには、最終的に「使われる」という現実が必要だからです。
上級者がDePINを見るときに確認する数字
ここまで理解できたら、最後にDePINをもう一段深く見るための数字を整理しておきましょう。
上級者がDePINを見る場合、トークン価格や時価総額だけではなく、まずネットワークの実稼働データを確認します。
代表的なのは、実際に稼働している設備数、ネットワーク利用量、有料利用者数、利用者が支払った料金、ネットワーク売上などです。
次に確認したいのが設備稼働率です。
100万台の設備が存在していても、その多くがほとんど使われていないのであれば、数字ほど大きな経済価値を生み出していない可能性があります。
さらに重要なのが、Revenue(売上)とToken Incentives(トークン報酬)の関係です。
利用者から得ている売上よりも、設備提供者へ配っているトークン報酬の方が圧倒的に大きい状態が長期間続くなら、その差額をどのように維持するのかを考える必要があります。
また、供給されるトークン量、既存トークンのロック解除、インフレ率などのトークノミクスも無視できません。
トークノミクスとは、トークンがどのように発行され、誰へ配られ、どのように市場へ供給されるのかという経済設計のことです。
どれだけ優れたサービスでも、大量のトークンが継続的に市場へ供給されれば、価格には別の圧力がかかる可能性があります。
つまり、DePINを見る時には二つの視点が必要です。
一つは、事業として成長しているか。
もう一つは、その事業価値がトークン保有者へどのようにつながる設計になっているか。
この二つは同じではありません。
ここまで区別して見ることができるようになると、DePINを「次に上がりそうな暗号資産」という表面的な見方ではなく、社会インフラ・事業・トークン経済という三つの構造から評価できるようになります。

DePINは「実際に使われているか」を見ると、本当の姿が見えてきます。では、その利用者が人間だけでなくAIになったらどうなるのか。次は、DePINとAIエージェントの関係を見ていきましょう。
DePINとAIエージェントはなぜ相性がいいのか

DePINとAIエージェントは、一見すると別々の技術に見えます。
しかし、AIエージェントが本格的に普及すると、計算能力、ストレージ、通信、電力といったインフラを、人間が一つひとつ手配するのではなく、AI自身が必要な時に必要な分だけ選び、利用する場面が増えていく可能性があります。
その時に重要になるのが、誰と契約するのか、どれだけ使ったのか、いくら支払うのかを自動で処理できる仕組みです。
DePINは、世界中に分散している設備や資源をネットワーク化し、ブロックチェーン上で利用記録や支払いを管理する考え方です。
AIエージェントは、人間の代わりに自律的に仕事を進める存在です。
この二つが組み合わさると、AIが必要な計算能力や保存容量を自分で探し、契約し、使った分だけ支払うという新しい経済活動が現実味を帯びてきます。
ここからは、AIエージェントとは何かという基本から、なぜ従来の銀行やクレジットカードだけでは機械同士の取引に限界があるのか、そしてDePINがどのような役割を果たす可能性があるのかを順番に見ていきます。
AIエージェントとは何か|人間の指示なしで動くAI
AIエージェントとは、人間が一つひとつ細かく指示を出さなくても、与えられた目的に向かって必要な作業を自分で組み立て、実行するAIのことです。
従来の生成AIは、「この文章を要約して」「この画像を作って」といった指示に対して、その場で回答する使い方が中心でした。
AIエージェントでは、もう一段先へ進みます。
例えば「来週の出張をできるだけ安く手配して」と指示した場合、航空券を検索し、ホテルを比較し、移動時間を確認し、候補を整理するところまで連続して処理するイメージです。
将来的には、さらに高度なAIエージェントが、企業の業務、物流、ソフトウェア開発、資産管理、データ処理などを自律的に進める可能性があります。
ここで重要なのは、AIが「答える存在」から、実際に行動する存在へ変わっていくことです。
行動するAIが増えれば、そのAIは計算能力を使い、データを保存し、外部サービスへアクセスし、場合によっては料金を支払う必要があります。
つまりAIエージェントの普及は、AIソフトウェアだけの問題ではなく、その裏側にある計算資源、通信、ストレージ、決済インフラまで含めた大きな構造変化につながっていきます。
AIはなぜ計算能力やストレージを自動で購入するようになるのか
AIエージェントが高度になるほど、一つのAIだけですべての処理を完結するのは難しくなります。
必要に応じて、外部のGPUを使ったり、大容量のストレージを借りたり、特定のデータベースへアクセスしたりする必要が出てきます。
例えば、画像生成を大量に行うAIエージェントであれば、通常よりも多くの計算能力が必要になります。
大量の動画を保存する仕事を任されたAIであれば、より多くのストレージ容量が必要になります。
そのたびに人間が管理画面を開き、サービスを比較し、契約して支払いを行っていては、自律的なAIとは言えません。
AIエージェントが本当に自律して働くなら、必要なリソースを自分で探し、価格や性能を比較し、必要な時間だけ利用する仕組みが必要になります。
これは人間で言えば、出張中に必要なホテルやレンタカーを自分で探して予約することに近いでしょう。
AIの場合は、それがGPU、ストレージ、通信回線、データ利用権になるわけです。
DePINでは、こうした資源が一つの巨大企業だけではなく、世界中のさまざまな提供者から供給される可能性があります。
AIエージェントが、その中から条件に合うものを自動的に選択できるようになれば、余っている設備と必要としているAIを直接つなぐ新しい市場が生まれます。
重要なのは、AIが何でも勝手に買うということではありません。
あらかじめ設定された予算や条件の中で、必要な資源を最適に調達する自動化が進む可能性があるということです。
銀行口座やクレジットカードでは難しい機械同士の決済
人間同士の決済であれば、銀行口座やクレジットカードは非常に便利です。
しかし、AIエージェントや機械同士が大量かつ自動的に取引する世界を考えると、従来型の決済にはいくつかの課題があります。
まず、AIそのものが人間と同じように本人確認を行い、自分名義の銀行口座やクレジットカードを自由に持つわけではありません。
実際には企業や個人のアカウントの下で動くことになります。
さらに、機械同士が一秒間に何度も少額の取引を行う場合、従来の決済手数料や承認プロセスが効率面で合わない可能性があります。
例えば、AIが10秒だけ計算能力を借り、その利用料としてごく少額を支払うとします。
そのたびにカード会社の承認や銀行処理を行う仕組みでは、取引コストの方が大きくなる可能性があります。
そこで注目されるのが、プログラムから直接扱えるデジタル決済です。
ブロックチェーン上の資産やスマートコントラクトを利用すれば、あらかじめ決められた条件の中で、機械同士が自動的に少額決済を行える可能性があります。
ただし、これは銀行やクレジットカードが不要になるという話ではありません。
従来金融は法定通貨の管理や本人確認、消費者保護などで重要な役割を持っています。
一方で、AIや機械が大量の小口取引を自動化する領域では、従来金融とは異なる決済レイヤーが補完的に必要になる可能性があるということです。
スマートコントラクトによる自動契約と自動支払い
DePINとAIエージェントを結びつける重要な技術の一つが、スマートコントラクトです。
スマートコントラクトとは、あらかじめ決めた条件をプログラムとしてブロックチェーン上に記録し、その条件が満たされると契約や支払いを自動的に実行する仕組みです。
例えば、あるAIエージェントがGPUを1時間だけ借りるとします。
「1時間利用できたことが確認されたら料金を支払う」という条件をスマートコントラクトへ設定しておけば、人間が毎回請求書を確認し、振込手続きを行わなくても処理できます。
ストレージでも同じです。
データが正しく保存されている間だけ料金を支払い、保存状態が確認できなくなれば支払いを止めるという設計も可能になります。
この仕組みの重要な点は、利用と支払いを結びつけやすいことです。
従来型の契約では、サービス提供者と利用者の間に請求処理、入金確認、契約管理など多くの事務作業が発生します。
AIエージェント同士が大量に取引する世界では、この事務処理を人間がすべて担当するのは現実的ではありません。
そこで、契約条件そのものをプログラム化し、利用実績に応じて自動決済する仕組みが重要になります。
DePINは設備の供給側を分散させ、スマートコントラクトはその設備を誰が、どれだけ使い、いくら支払うかを自動化する役割を担う可能性があります。

AI同士が経済活動する時代にDePINが果たす可能性
AIエージェントが普及すると、将来的には人間だけではなく、AI同士がサービスを売買する経済圏が生まれる可能性があります。
あるAIがデータ分析を行うために外部の計算能力を借りる。
別のAIが大量のデータを保存するためにストレージを購入する。
自動運転車が道路情報を受け取り、その情報提供サービスへ少額の料金を支払う。
工場のAIが必要な電力や計算能力をその時点の価格に応じて調達する。
こうした取引が大量に発生するようになると、重要になるのは「人間が使いやすいサービス」だけではありません。
AIから見ても使いやすいインフラが必要になります。
つまり、サービスの価格や利用条件を機械が読み取れること、契約を自動で実行できること、利用実績を確認できること、そして支払いまでプログラムで完結できることです。
DePINは、この条件と相性が良い可能性があります。
世界中に分散しているGPU、通信設備、ストレージ、電力などをネットワーク化し、それぞれの利用条件や料金を機械が扱える形にできれば、AIエージェントが必要な資源を自動的に調達できるからです。
もちろん、これはまだ発展途上の分野です。
技術的な課題だけではなく、法律、本人確認、責任の所在、セキュリティ、価格の安定性など、解決しなければならない問題も多く残っています。
だから僕は、「AIエージェントとDePINが必ずこの形になる」と断定するのではなく、AIが自律化するほど、機械が直接使えるインフラと決済の重要性が高まるという構造に注目しています。
これまでインターネットは、人間同士をつなぐネットワークとして成長してきました。
これからは、人間だけではなくAIや機械まで経済活動へ参加する可能性があります。
その時、DePINが単なる暗号資産の一分野ではなく、AI時代の経済活動を裏側から支えるインフラの一つになるのか。
ここは、今後数年間で非常に注目しておきたいテーマです。

AIが自分で必要な資源を選ぶ時代になると、「データをどこへ保存するのか」も重要になります。次はFilecoinを例に、データ保存そのものがDePIN化する仕組みを見ていきましょう。
Filecoinに見る分散型ストレージ|データ保存もDePIN化する

AI時代にDePINが注目される理由を考えるうえで、通信や計算能力と並んで欠かせないのがデータ保存です。
AIは、大量のデータを読み込み、分析し、さらに新しい文章、画像、音声、動画などを生成します。つまり、AIが高度化するほど「計算する場所」だけではなく、「保存する場所」も必要になります。
これまでデータ保存の中心は、大手クラウド事業者が運営する巨大なデータセンターでした。しかし、保存するデータ量が増え続ける中で、特定の企業や施設だけに依存するのではなく、世界中に分散しているストレージ容量を活用しようという考え方も広がっています。
その代表例の一つが**Filecoin(ファイルコイン)**です。
Filecoinは、余っている保存容量を持つ人や事業者と、データを保存したい利用者をネットワーク上でつなぎ、保存状況や支払いをブロックチェーンで管理する仕組みです。
ここからは、Filecoinを例にしながら、分散型ストレージが従来のクラウドと何が違うのか、なぜDePINの重要な分野なのかを順番に見ていきます。
Filecoinとは何か|分散型データ保存の代表例
Filecoin(ファイルコイン)は、世界中に存在するストレージ容量をネットワーク化し、データを保存したい利用者へ提供する分散型ストレージの代表的なプロジェクトです。
分かりやすく言えば、「使っていない保存スペースを持っている人」と「データを預けたい人」をつなぐ仕組みです。
従来であれば、企業や個人が大量のデータを保存する場合、大手クラウド事業者が持つデータセンターを利用するのが一般的でした。
Filecoinでは、一つの会社がすべての保存設備を持つのではなく、世界中のさまざまな事業者がストレージを提供し、それらを一つのネットワークとして活用します。
ただし、単に「空いているハードディスクを貸す」というだけではありません。
重要なのは、本当にデータが保存され続けているのかを確認できる仕組みがあることです。
データを預けた側からすれば、料金だけ支払っているのに、実際には保存されていなかったという状態では困ります。
そこでFilecoinでは、保存事業者がデータを正しく保管していることを証明し、その結果に応じて報酬や支払いが行われる設計が使われています。
つまりFilecoinは、ストレージを分散するだけではなく、保存というサービスそのものを検証可能な形にしようとしている点が特徴です。
従来のクラウドストレージとの違い
従来のクラウドストレージでは、Google、Amazon、Microsoftなどの大手事業者が巨大なデータセンターを運営し、利用者はそこへデータを預けます。
この仕組みは非常に便利で、安定性も高く、多くの企業や個人にとって今後も重要なインフラであり続けるでしょう。
一方で、構造としては中央集権型です。
つまり、保存設備の管理、料金体系、サービス内容、アクセス権限などを特定の事業者が管理しています。
Filecoinのような分散型ストレージでは、この構造が異なります。
複数のストレージ提供者がネットワークへ参加し、利用者は一つの企業だけに依存せず、分散された保存先を利用できる可能性があります。
ここで重要なのは、「分散型だから必ず優れている」という話ではありません。
大手クラウドには、サポート体制、利便性、セキュリティ管理、企業向け機能など大きな強みがあります。
一方で、分散型ストレージには、一社への依存を減らせること、保存資源を世界中から集められること、保存実績をブロックチェーン上で確認しやすいことといった特徴があります。
つまり、従来のクラウドと分散型ストレージは競合するだけではなく、用途によって使い分けられる可能性があります。
AI時代には保存するデータ量が増えるため、クラウドだけでなく、分散型ストレージという選択肢がどこまで実用化されるかを見ることが重要になります。
オンチェーンで保存状態を確認する仕組み
Filecoinを理解するうえで重要なキーワードの一つがオンチェーンです。
オンチェーンとは、契約や利用記録、支払いなどの情報をブロックチェーン上で管理することを意味します。
Filecoinでは、単に「データを保存しました」と自己申告するのではなく、保存事業者が本当にデータを保有し続けているかを、ネットワーク上で確認できる仕組みが使われています。
これは、利用者にとって非常に重要です。
例えば、倉庫を借りて荷物を預けたとします。
毎月保管料を支払っているのに、倉庫側が本当に荷物を保管しているのか確認できなければ不安ですよね。
分散型ストレージでも同じです。
「保存契約が存在すること」と「実際にデータが保存されていること」は別です。
そこでFilecoinでは、保存が継続されていることを証明する仕組みを使い、ネットワーク上で検証できるようにしています。
この考え方が、DePINと非常に相性が良い理由です。
世界中に分散した設備を使う以上、中央の管理者だけを信頼するのではなく、サービスが本当に提供されたことを確認できる仕組みが必要になるからです。
僕は、この「利用実績を確認できる」という部分こそ、ブロックチェーンが現実世界のインフラと結びつく時に重要になるポイントだと考えています。
「保存できた分だけ支払う」という考え方
分散型ストレージの考え方をより分かりやすく理解するには、使えた分に対して支払うという視点が重要です。
従来のサービスでは、契約した容量やプランに応じて固定料金を支払う形が一般的です。
一方で、ブロックチェーンやスマートコントラクトを活用すれば、「本当に保存されていた期間」「実際に提供された保存容量」「契約条件を満たしたか」といった条件に応じて、支払いを自動化することができます。
例えば、あるデータを1年間保存する契約をしたとします。
もし途中で保存状態が維持されなくなれば、その後の支払いを自動的に停止するという仕組みを設計できます。
これは、サービス提供者にとっても利用者にとっても重要です。
提供者側は、正しくサービスを提供すれば対価を受け取れます。
利用者側は、サービスが提供されていない期間まで料金を払い続けるリスクを減らせます。
つまり、**「契約したから支払う」のではなく、「実際にサービスが提供されたから支払う」**という考え方です。
この構造は、DePIN全体に共通する重要な考え方でもあります。
通信なら、実際に通信が使われたか。
計算資源なら、実際にGPUが利用されたか。
ストレージなら、実際にデータが保存されたか。
サービスの実利用と支払いが結びつくことで、トークン報酬だけに頼らない持続可能な経済圏へ近づいていきます。
AI時代にデータ保存の需要がさらに増える理由
AI時代にストレージが重要になる最大の理由は、データ量が今後さらに増え続ける可能性が高いことです。
生成AIは文章だけではありません。
画像、音声、動画、3Dデータ、企業の業務データ、センサーデータなど、扱う情報の種類が急速に増えています。
さらにAIエージェントが普及すれば、AI自身が行った判断、作業履歴、生成物、外部サービスとのやり取りなども大量に保存されるようになります。
特に動画や高精細画像は、テキストデータと比べて非常に大きな容量を必要とします。
企業がAIを本格導入すれば、学習用データ、顧客データ、業務記録、生成コンテンツなど、保存すべき情報はさらに増えていきます。
ここで重要になるのが、保存容量の確保だけではありません。
どこに保存するのか、いくらで保存するのか、障害が起きた時にどうするのか、特定の事業者へ依存しすぎないかという問題も重要になります。
だからこそ、従来のクラウドストレージに加えて、分散型ストレージという選択肢がどこまで実用化されるのかに注目が集まっています。
DePINの観点から見ると、世界中に眠っている保存容量を活用し、それをAIや企業のデータ需要へつなげられるかがポイントです。
ただし、保存容量が多いだけでは意味がありません。
実際に利用され、継続的に料金が支払われ、サービス品質が保たれて初めて社会インフラになります。
AI時代にデータは「新しい石油」と表現されることがありますが、データは持っているだけでは価値を生みません。
安全に保存し、必要な時に取り出し、使える状態を維持するインフラがあって初めて価値になります。
その意味で、分散型ストレージはDePINの中でも、AI時代との関係を長期的に見ていく価値のある分野だと僕は考えています。

データ保存まで分散化できても、処理が遅ければ社会インフラとしては使いにくいですよね。次は、なぜDePINの成長にブロックチェーンの高速化が必要なのかを見ていきましょう。
DePINを社会インフラにするためにブロックチェーン高速化が必要な理由

DePINが本当に社会インフラとして広がっていくためには、通信設備やストレージ、計算能力を集めるだけでは足りません。
その裏側で動くブロックチェーンが、大量の取引や利用記録を速く、安く、安定して処理できることが必要になります。
人間同士の送金だけであれば、一日に数回の取引でも十分かもしれません。
しかし、AIエージェントやIoT機器、自動運転車、分散型通信設備などが常時つながる世界では、機械同士が一秒間に何度もデータや料金をやり取りする可能性があります。
そうなると、従来型のブロックチェーンでは処理能力が足りず、手数料や待ち時間が大きな問題になります。
そこで重要になるのが、L1、L2、モジュラーブロックチェーン、高速L1といったスケーリング技術です。
ここからは、難しい言葉をできるだけかみ砕きながら、なぜDePINとブロックチェーンの高速化が切り離せないのかを順番に見ていきます。
なぜ従来のブロックチェーンでは処理能力が足りなくなるのか
従来のブロックチェーンは、安全性や分散性を重視して設計されてきました。
そのため、すべての取引を多くのコンピューターで確認し、正しい記録として合意してから確定する仕組みが使われています。
この方法は改ざん耐性や信頼性の面で強みがありますが、その一方で、処理量が増えると混雑しやすくなります。
利用者が少ないうちは問題なくても、何百万、何千万という機械やAIが常時取引を行うようになると、処理待ちや手数料上昇が発生しやすくなります。
例えば、道路が空いている時は快適に走れても、車が一気に増えれば渋滞が起きます。
ブロックチェーンも同じで、利用者や機械が増えるほど、処理能力そのものを拡張しなければ社会インフラとして使いにくくなるという課題があります。
DePINでは、通信利用、データ保存、GPU利用、電力取引など、非常に細かな記録が大量に発生する可能性があります。
だからこそ、ブロックチェーンの高速化や処理分散が重要になります。
L1とは|ブロックチェーンの基盤となるメイン道路
L1(レイヤーワン)とは、ブロックチェーンそのものの基盤となるネットワークです。
BitcoinやEthereum、Solanaなどは、それぞれ独自のL1を持っています。
分かりやすく言えば、L1は高速道路の「本線」です。
取引の記録、安全性の確保、ネットワーク全体のルールなど、ブロックチェーンの中核部分を担います。
L1が重要なのは、最終的な記録の正しさや安全性を担保する土台になるからです。
しかし、本線だけですべての車を処理しようとすれば、交通量が増えた時に渋滞が起きます。
ブロックチェーンでも同じで、すべての取引をL1だけで処理しようとすると、利用者が増えるほど処理速度や手数料が問題になります。
そこで、L1そのものを高速化する方法と、L1の外側に別の処理レイヤーを作る方法が発展してきました。
DePINのように大量の小口取引が発生する世界では、L1が最終的な信頼の土台として機能しながら、その上で処理を分散する設計が重要になります。
L2とは|取引を別レーンで処理するバイパス道路
L2(レイヤーツー)とは、L1の上に構築される追加の処理レイヤーです。
高速道路で例えるなら、混雑している本線の横に作られるバイパス道路のようなものです。
すべての取引をL1で一件ずつ処理するのではなく、L2側で大量の取引をまとめて処理し、その結果だけをL1へ記録します。
これによって、処理速度を上げながら手数料を下げやすくなります。
例えば、AIエージェント同士が一日に何万回も少額決済を行う場合、そのすべてをL1へ直接記録すると負荷が大きくなります。
L2を使えば、細かな取引を別の場所でまとめて処理し、最終結果だけをL1へ残すことができます。
つまりL2は、安全性の土台をL1に残しながら、処理量を増やすための補助レイヤーです。
DePINが社会インフラとして広がるほど、こうしたスケーリング技術の重要性は高まります。
モジュラーブロックチェーンとは|仕事を役割分担する考え方
モジュラーブロックチェーンとは、一つのブロックチェーンにすべての仕事を詰め込むのではなく、役割ごとに分担する考え方です。
学校で例えるなら、一人の先生が授業、採点、警備、給食、事務まですべて担当するのではなく、それぞれ専門の担当者へ仕事を分けるイメージです。
ブロックチェーンでも、取引を実行する役割、取引が正しいか確認する役割、データを保存する役割、最終的な安全性を守る役割などがあります。
これらを一つのネットワークだけで全部処理すると、負荷が集中します。
そこで役割を分けることで、それぞれの部分を最適化し、全体として処理能力を高めようとします。
この考え方のメリットは、一つのシステムですべてを無理に処理しないことです。
DePINでは通信、ストレージ、AI計算、電力取引など、用途によって必要な性能が異なります。
だからこそ、それぞれの役割を分担できるモジュラー型の考え方は、DePINと相性が良い可能性があります。

高速L1とは|基盤そのものを高速化するアプローチ
L2やモジュラー型のように処理を分散する方法とは別に、L1そのものを高速化するアプローチもあります。
代表的な考え方の一つが、高速L1です。
これは高速道路で言えば、バイパス道路を作るのではなく、本線そのものを広くし、車線数を増やし、制限速度も上げるような考え方です。
Solanaなどは、基盤となるネットワーク自体の処理性能を高めることで、多くの取引を低コストで処理する方向を重視しています。
高速L1の強みは、取引を別レイヤーへ逃がさなくても、基盤上で多くの処理を完結しやすいことです。
一方で、処理性能を高めるほど、必要なハードウェア性能やネットワーク要件が上がる場合もあります。
つまり、高速L1にもメリットと課題があります。
重要なのは、L2型、モジュラー型、高速L1型のどれか一つだけが正解ということではありません。
DePINの用途に応じて、どの構造が最も安く、速く、安定して処理できるかが重要になります。
DePINとスケーラビリティが切り離せない理由
DePINが社会インフラとして本当に普及するためには、ブロックチェーンのスケーラビリティが欠かせません。
スケーラビリティとは、利用者や取引量が増えても、処理速度やコストを大きく悪化させずに対応できる能力のことです。
通信DePINで利用者が増えれば、通信記録や料金処理も増えます。
ストレージDePINで保存データが増えれば、保存証明や契約処理も増えます。
AIエージェントが計算能力を自動購入するようになれば、小口決済や利用記録はさらに大量に発生します。
つまり、DePINが成功すればするほど、ブロックチェーンにかかる負荷も大きくなります。
ここが非常に重要です。
利用者が増えるほど遅くなり、手数料が上がるようでは、社会インフラとしては使いにくくなります。
逆に、利用量が増えても高速で安定し、低コストで処理できるのであれば、DePINは現実社会へ広がりやすくなります。
だから僕は、DePINを見る時にプロジェクト単体だけを見るのではなく、そのDePINがどのブロックチェーン上で動き、どのようなスケーリング技術を使っているのかまで確認することが重要だと考えています。
DePINは設備の話に見えますが、その裏側ではブロックチェーンの処理性能が事業の成否を左右します。
つまり、現実世界のインフラとデジタル側の処理能力は表裏一体なのです。

高速化には、L2やモジュラーなど複数の考え方があります。では、L1そのものを高速化すると何が変わるのでしょうか。次はSolanaを具体例に見ていきましょう。
Solanaの高速化から見るDePIN時代のブロックチェーン競争

DePINが通信、ストレージ、計算能力、電力といった現実社会のインフラへ広がるほど、その裏側を支えるブロックチェーンには、これまで以上の処理能力が求められます。
そこで注目したいのが、L1(レイヤーワン)そのものを高速化するアプローチです。その代表例の一つとして挙げられるのがSolana(ソラナ)です。
Solanaは、取引を別のレイヤーへ逃がすことだけに頼るのではなく、基盤となるネットワーク自体の処理能力を高め、大量の取引を低コストかつ短時間で処理する方向を重視してきました。
さらに現在は、取引確定を高速化するAlpenglow(アルペングロウ)、一度に処理できる計算量の拡大、そしてAgave(アガベ)やFiredancer(ファイアダンサー)など複数のバリデータークライアントによってネットワークの安定性を高める取り組みも進められています。
DePINの将来を考えるなら、特定のトークン価格だけではなく、大量の機械やAIが利用しても耐えられるブロックチェーンはどのようなものなのかという視点が重要です。
ここではSolanaを一つの具体例として、高速化だけではなく、確定速度、処理量、安定性という3つの視点からDePIN時代のブロックチェーン競争を見ていきます。
Solanaが高速L1として注目される理由
Solana(ソラナ)は、高い処理性能と低い取引コストを重視して設計されたL1ブロックチェーンです。
前章で高速道路の例を使いましたが、Solanaの考え方は、バイパス道路を増やすだけではなく、メイン道路そのものをできるだけ広く、速くしようとする方向に近いと言えます。
なぜこれがDePINと関係するのでしょうか。
DePINが本格的な社会インフラになれば、ブロックチェーンを利用するのは人間だけではなくなります。
通信設備が利用状況を記録する。AIエージェントが計算能力を購入する。機械同士が少額決済を行う。センサーがデータを送信する。
こうした処理が世界中で常時発生する可能性があります。
この世界では、一回の取引に高い手数料がかかったり、確定まで長時間待たされたりする仕組みは使いにくくなります。
だからこそ、大量の取引を低コストかつ高速に処理できるブロックチェーンが重要になります。
ただし、処理速度が速いだけで社会インフラになれるわけではありません。
利用者が増えても安定して動き続けられるのか、障害に強いのか、ネットワークを支える仕組みが十分に分散されているのかという点も同時に見る必要があります。
Solanaを見る時も、「速いブロックチェーンだから将来性がある」と単純化するのではなく、速度・コスト・安定性・分散性をどこまで両立できるかを見ることが重要です。
Alpenglowとは|取引確定時間を短縮する新しい仕組み
Solanaの高速化を考えるうえで注目されているのが、**Alpenglow(アルペングロウ)**と呼ばれる新しいコンセンサス設計です。
コンセンサスとは、簡単に言えば「どの取引記録を正しいものとしてネットワーク全体で認めるのか」を決める仕組みです。
ブロックチェーンでは、一つの会社が中央で記録を確定するわけではありません。
複数のバリデーターがネットワークへ参加し、正しい取引について合意する必要があります。
バリデーターとは、取引内容を確認し、ブロックチェーンの記録を維持するコンピューターや運用主体のことです。
ここで重要になるのがファイナリティです。
ファイナリティとは、「この取引は確定した」と安心して扱える状態になるまでの時間を意味します。
Alpenglowは、この確定までの時間を大幅に短縮し、条件が整えば約150ミリ秒、つまり約0.15秒程度の確定を目標とする設計として開発が進められています。
0.15秒というと、人間が画面を見ながらほとんど待ち時間を意識しないほどの短さです。
なぜ、ここまで速い確定が必要なのでしょうか。
例えばAIエージェントが計算能力を購入したり、機械が別の機械へ少額料金を支払ったりする場合、毎回数十秒、数分と待つようでは自動処理全体が遅くなってしまいます。
DePINが現実社会のインフラへ近づくほど、単なる「取引速度」だけではなく、いつ取引が確定したと言えるのかという確定速度も重要になります。
Alpenglowは、Solanaが単に多くの取引を処理するだけではなく、リアルタイムに近い経済活動へ対応しようとする取り組みの一つとして見ると理解しやすいでしょう。
CUとは|ブロックチェーンの処理量を表す考え方
Solanaを調べていると、CU(Compute Units/コンピュート・ユニッツ)という言葉を目にすることがあります。
CUとは、Solana上でプログラムを実行する際に、どれくらいの計算処理を必要とするのかを表すための単位です。
初心者の方は、学校の授業で考えると分かりやすいでしょう。
一時間の授業で先生と生徒が処理できる問題数に限界があるように、ブロックチェーンにも一定時間の中で処理できる計算量には上限があります。
簡単な送金であれば必要な計算量は小さくても、複雑なスマートコントラクトや大量の処理を実行すれば、より多くのCUを消費します。
そのため、一つのブロックで利用できる計算量が増えれば、理論上は同じ時間の中でより多く、あるいはより複雑な処理を扱える余地が広がります。
これはDePINにとって重要です。
将来、通信、ストレージ、AI、機械同士の決済などがブロックチェーン上で大量に処理されるようになれば、単純な送金だけではなく、利用状況の記録やスマートコントラクトの実行など、さまざまな計算処理が同時に発生します。
つまり、見るべきなのは「1秒間に何件処理できる」という数字だけではありません。
実際のアプリケーションが必要とする計算処理を、ネットワーク全体としてどれだけ安定して処理できるのかという視点が重要です。
CUは少し専門的な言葉ですが、DePIN時代のブロックチェーンを見るための「道路の車線数や交通容量」のようなものだと考えると理解しやすくなります。
AgaveとFiredancerがネットワーク安定性に重要な理由
社会インフラとしてブロックチェーンを考えるなら、速度と同じくらい重要なのが安定性です。
そこでSolanaで注目したいのが、Agave(アガベ)やFiredancer(ファイアダンサー)といった異なるバリデータークライアントの存在です。
バリデータークライアントとは、Solanaのルールに従って取引を確認し、ネットワークを維持するために使われるソフトウェアです。
ここで「なぜ複数必要なのか」と疑問に思うかもしれません。
例えば、全国の銀行ATMがすべてまったく同じ一種類のソフトウェアだけで動いていたとします。
そのソフトウェアに重大な不具合が見つかれば、多くのATMが同時に影響を受ける可能性があります。
ブロックチェーンでも同じです。
ネットワークを支えるバリデーターが一種類のソフトウェアへ大きく依存していると、そのソフトウェアに重大なバグや障害が発生した時、ネットワーク全体へ影響が広がるリスクがあります。
そこで重要になるのがクライアント多様性です。
異なる開発チームが作った複数のバリデータークライアントが実運用されれば、一つの実装に問題が起きた時の影響を分散しやすくなります。
AgaveはSolanaで広く利用されている主要クライアントの一つで、Firedancerは別系統の実装として開発が進められてきました。
重要なのは、名前を覚えることではありません。
社会インフラを支えるネットワークは、一つのソフトウェアだけに依存しない方が障害への耐性を高めやすいという構造を理解することです。
DePINが通信やAI、データ保存などの現実サービスを支えるようになれば、「速いけれど時々止まる」では困ります。
高速化と同時に、ネットワークを止まりにくくする仕組みも進化する必要があります。
高速で安定したブロックチェーンがDePINに必要な理由
ここまでSolanaを例に、処理速度、ファイナリティ、計算量、クライアント多様性を見てきました。
これらは別々の技術テーマに見えますが、DePINという視点から見ると一本につながります。
DePINが本当に社会インフラになれば、ネットワーク上では人間がたまに送金するだけではありません。
通信設備が利用状況を記録し、AIがGPUを借り、ストレージの保存状態が確認され、機械同士が少額決済を行う。
こうした処理が、24時間止まることなく大量に発生する可能性があります。
その世界で必要になるのは、単に最高速度が速いブロックチェーンではありません。
速いこと、安いこと、確定が早いこと、利用者が増えても処理できること、そして安定して動き続けること。
これらを総合的に満たす必要があります。
例えば、高速道路がどれだけ広くても、毎週事故で通行止めになっていたら社会インフラとしては困ります。
反対に、絶対に止まらなくても、常に大渋滞して目的地まで何時間もかかる道路では使いにくいでしょう。
ブロックチェーンも同じです。
だからDePIN時代の競争では、「どのチェーンが一番速いか」という単純な比較だけではなく、実際の社会インフラをどれだけ低コストで安定して支えられるかが重要になっていくと僕は考えています。
Solanaは、その競争を見るための一つの分かりやすい事例です。
ただし、Solanaだけが正解という話ではありません。
高速L1、L2、モジュラーブロックチェーンなど、それぞれ異なる方法でスケーラビリティの問題に挑戦しています。
DePINを見る時には、プロジェクト名やトークン価格だけを見るのではなく、その裏側でどのブロックチェーンが使われ、なぜその技術構造が選ばれているのかまで見る。
そこまで理解できるようになると、暗号資産市場を単なる価格変動ではなく、次世代インフラの技術競争として見ることができるようになります。

技術がどれだけ進化しても、すべてのDePINが成長するわけではありません。では、本物をどう見極めるのか。次は、僕が重要だと考える5つのチェックポイントを見ていきましょう。
DePINプロジェクトを見極める5つのチェックポイント

DePINという言葉が広がると、それに合わせて多くのプロジェクトが登場してきます。
しかし、名前にDePINと付いているだけで、すべてが長期的に成長するわけではありません。
ここまで見てきたように、DePINの本質は、現実世界のインフラ需要を、分散型ネットワークによってどれだけ効率よく満たせるかにあります。
だからこそ、プロジェクトを判断する時には、トークン価格や話題性だけではなく、実際に使われているか、利用者がお金を払っているか、売上が増えているか、トークン報酬に依存していないか、そして本当にブロックチェーンを使う意味があるのかまで見る必要があります。
僕は、DePINを見る時に最低でもこの5つを確認することが大切だと考えています。
ここからは、初心者の方でも使えるように、DePINプロジェクトを見極めるための具体的なチェックポイントを順番に整理していきます。
① 実際の利用者が増えているか
最初に見るべきなのは、実際の利用者が増えているかどうかです。
設備の数や参加者数が増えていても、そのネットワークを本当に使う人が増えていなければ、事業としての価値は限定的です。
例えば通信DePINであれば、通信設備が何万台設置されているかではなく、その通信網を実際に使っている利用者や通信事業者が増えているかを見る必要があります。
ストレージDePINなら、保存容量の総量だけではなく、実際にデータを預ける利用者が増えているかが重要です。
GPUや計算資源を提供するDePINであれば、登録されているGPUの台数より、実際にその計算能力を借りる企業や開発者が増えているかを見るべきです。
ここで重要なのは、「登録者数」と「利用者数」を混同しないことです。
アカウントを作った人が多くても、継続的にサービスを利用していなければ、実需があるとは言いにくいでしょう。
だから僕は、月間利用者数、継続利用率、実稼働率など、実際の利用行動が分かる数字を重視します。
② 利用者が現実の料金を支払っているか
次に重要なのが、利用者が本当に料金を支払っているかという点です。
無料で使えるサービスや、トークン報酬がもらえるサービスには人が集まりやすいです。
しかし、インセンティブがなくなっても利用者が残るのかを見なければ、本当の需要は分かりません。
例えば、無料キャンペーン中は利用者が急増していても、有料化した瞬間に利用者が減るのであれば、それは価格に見合う価値を感じてもらえていなかった可能性があります。
本当に強いDePINは、利用者側に「お金を払ってでも使いたい理由」があります。
通信が安い。
ストレージが使いやすい。
GPUを必要な時にすぐ借りられる。
電力を効率的に使える。
こうした現実の価値があるからこそ、利用者は料金を支払います。
だから、利用者数だけではなく、有料利用者数や利用料金の総額まで見ることが重要です。
「使われている」だけではなく、「お金を払って使われているか」まで確認して初めて、実需の強さが見えてきます。
③ ネットワーク売上が増えているか
利用者がお金を払っているなら、その次に見るべきなのがネットワーク売上です。
ネットワーク売上とは、実際のサービス利用によって発生した収益のことです。
通信なら通信料金。
ストレージなら保存料金。
計算資源ならGPUやサーバーの利用料。
こうした外部から入ってくる売上が増えているかを見る必要があります。
ここで大切なのは、トークン価格の上昇と売上の増加を区別することです。
トークン価格が上がれば、プロジェクト全体が成長しているように見えることがあります。
しかし、サービス利用から得られる売上が増えていなければ、事業としての成長とは言い切れません。
一方で、トークン価格がそれほど上がっていなくても、利用者が増え、売上が継続的に積み上がっているのであれば、事業基盤は強くなっている可能性があります。
株式投資で企業の株価だけではなく売上や利益を見るのと同じです。
DePINも、暗号資産だから特別なのではなく、事業としてどれだけ外部需要を取り込めているかを見る必要があります。
④ トークン報酬なしでも事業が成立するか
DePINを見る上で、最も重要なポイントの一つが、トークン報酬なしでも事業が成立するかです。
ネットワークの立ち上げ段階では、設備提供者を集めるためにトークンを配ることは合理的です。
しかし、長期的にずっとトークンを発行し続けなければ設備提供者が残らないのであれば、そのネットワークは本当に持続可能なのかを考える必要があります。
例えば、利用者から得られる売上が年間10億円しかないのに、設備提供者へ年間100億円相当のトークンを配らなければネットワークを維持できない状態が続いていたとします。
この差額をずっと新しいトークン発行で埋めるのであれば、どこかで限界が来る可能性があります。
理想は、ネットワークが成長するにつれて、利用者からの売上が設備提供者への報酬や運営コストを支える比率が高まっていくことです。
つまり、初期はトークン報酬で成長し、成熟するにつれて実際の事業収益へ重心を移していけるかどうかです。
この移行ができるプロジェクトは、DePINとしての持続可能性が高まります。
⑤ ブロックチェーンを使う必然性があるか
DePINだからといって、すべてのサービスにブロックチェーンが必要とは限りません。
ここも非常に重要な視点です。
一つの企業が中央で管理した方が安く、速く、安全に提供できるのであれば、無理にブロックチェーンを使う意味はありません。
だから僕は、DePINを見る時に必ず、**「なぜこのサービスはブロックチェーンでなければならないのか」**を考えます。
例えば、世界中の設備提供者へ自動的に報酬を分配したい。
誰がどれだけ設備を提供し、どれだけ使われたかを透明に記録したい。
国境を越えて、AIや機械同士が自動契約や自動決済を行いたい。
こうした場合には、ブロックチェーンを使う意味が出てきます。
逆に、参加者が一社だけで、利用者も限定され、中央管理で十分に運営できるのであれば、ブロックチェーンを導入することで余計なコストや複雑さが増える場合もあります。
つまり、ブロックチェーンを使っていること自体が価値なのではなく、使うことで何が改善されるのかを見る必要があります。
⑥派手な提携発表より実稼働データを見る
暗号資産市場では、「大手企業と提携」「世界的企業と協業」といったニュースが注目を集めやすいです。
もちろん、提携は重要な材料です。
しかし、提携発表と実際の利用は別です。
実証実験で終わる場合もあります。
一部の地域だけでテストされ、その後広がらないこともあります。
だからこそ、僕は派手な発表よりも、実稼働データを見る方が重要だと考えています。
実際の利用者数。
実際の通信量。
実際の保存データ量。
実際に使われたGPU時間。
実際の売上。

こうした数字は、ニュースの見出しほど派手ではありません。
しかし、DePINが本当に社会インフラとして成長しているかを見るには、こちらの方がはるかに重要です。
長期的に強いプロジェクトは、発表だけでなく、時間とともに利用実績が積み上がっていきます。
だから僕は、DePINを見る時に「誰と提携したか」ではなく、「その提携によって実際に何が使われ、どれだけ売上が生まれたか」まで見ることを大切にしています。
ここまで確認できれば、DePINを単なるテーマ投資ではなく、本物の事業として評価する視点が身についてきます。

見るべきポイントが分かっても、DePINにリスクがないわけではありません。次は、期待だけで判断しないために知っておきたいリスクを整理していきましょう。
DePINにはどのようなリスクがあるのか

DePINは、AI時代の通信、ストレージ、計算能力、電力などを支える新しいインフラの形として注目されています。
ただし、将来性のあるテーマだからといって、すべてのプロジェクトが順調に成長するわけではありません。
むしろ、現実世界の設備を扱うDePINだからこそ、設備投資、利用者獲得、収益化、規制、技術障害など、一般的なWeb3プロジェクトとは少し違うリスクも存在します。
特に注意したいのは、ネットワークが拡大しているように見えても、実際の利用者や売上が伴っていないケースです。
また、トークン報酬が高いうちは参加者が集まっていても、報酬が下がった瞬間に設備提供者が離れてしまう可能性もあります。
だからこそDePINを見る時は、「成長しているか」だけではなく、その成長が持続可能なのかまで確認する必要があります。
ここからは、DePINを長期的な社会インフラとして評価するうえで、最低限知っておきたいリスクを順番に見ていきます。
設備だけ増えて利用者が増えないリスク
DePINでは、ネットワークの拡大を示す数字として、設備数やノード数が注目されやすいです。
しかし、設備が増えることと、利用者が増えることは別です。
例えば通信DePINで、世界中に何十万台もの通信設備が設置されていたとしても、その設備を通して実際に通信する利用者がほとんどいなければ、事業としての価値は限定的です。
ストレージでも同じです。
保存可能容量が大量にあっても、実際にデータを預ける企業や個人が増えなければ、設備だけが余ることになります。
この状態が続くと、設備提供者は報酬を得にくくなり、ネットワークから離脱する可能性があります。
さらに、設備には電気代、通信費、保守費用などのコストがかかります。
利用されない設備を増やし続ければ、ネットワーク全体としても非効率になります。
だから僕は、設備数を見る時には必ず、利用者数、稼働率、実際の通信量や保存量も合わせて確認する必要があると考えています。
見た目の規模が大きいことよりも、実際に使われているかどうかが重要です。
トークン報酬に依存しすぎるリスク
DePINの初期段階では、参加者を集めるためにトークン報酬が使われることがあります。
これはネットワークを短期間で広げるためには有効な方法です。
しかし、トークン報酬に依存しすぎると、持続可能性に問題が出る可能性があります。
例えば、利用者から得られる売上が少ないにもかかわらず、大量のトークンを発行して設備提供者へ報酬を配り続けている場合、その仕組みはトークン価格に大きく左右されます。
トークン価格が高いうちは参加者が増えていても、価格が下がれば報酬の魅力がなくなり、一気に設備提供者が減る可能性があります。
さらに、新しいトークンが継続的に市場へ供給されることで、インフレ圧力がかかる場合もあります。
ここで重要なのは、ネットワークの成長とともに、トークン報酬中心の仕組みから、実際の利用料金や事業売上を中心とした仕組みへ移行できるかどうかです。
初期の報酬は成長のための燃料です。
しかし、長期的には実需による売上がネットワークを支える状態へ変わる必要があります。
競合サービスとの価格競争
DePINには、既存の大手通信会社やクラウド事業者、データセンター企業など、強力な競合が存在します。
分散型だからといって、必ずしも既存サービスより安く、便利になるとは限りません。
例えばクラウドストレージの分野では、大手事業者は巨大な設備投資を行い、非常に高い安定性と使いやすさを提供しています。
通信分野でも、既存の大手通信会社は長年の設備投資と顧客基盤を持っています。
DePINが利用者を増やすためには、価格、品質、速度、安定性、利便性のどれかで明確な優位性を持つ必要があります。
もし価格だけで勝負しようとすると、既存企業が値下げを行った時に競争が激しくなる可能性があります。
また、DePIN側が設備提供者へ高い報酬を支払いながら、利用料金も安くしようとすると、収益性が悪化することもあります。
だから僕は、DePINの競争力を見る時に、「分散型だから新しい」という理由だけではなく、利用者が既存サービスから乗り換える具体的な理由があるかを見ることが重要だと考えています。
規制や法律が変わる可能性
DePINは、暗号資産だけでなく、通信、電力、データ管理など、現実社会のインフラと直接関わります。
そのため、規制や法律の影響を受けやすい分野でもあります。
通信設備であれば、電波利用や通信事業に関する法律があります。
電力分野であれば、発電、送電、電力販売などに関する規制があります。
データ保存であれば、個人情報保護やデータの保存場所に関する法律が関係することもあります。
さらに、トークンが報酬として使われる場合には、暗号資産や金融商品に関する規制が影響する可能性があります。
重要なのは、技術的に実現できることと、法律上認められることは別だという点です。
特にDePINは世界中の参加者が関わるため、国によって規制内容が異なることも大きな課題です。
だからこそ、DePINプロジェクトを見る際には、技術や利用者数だけではなく、どの国でサービスを展開しているのか、どのような法的枠組みの中で運営されているのかも確認する必要があります。
技術障害やネットワーク停止のリスク
DePINが社会インフラになるほど、技術的な安定性が重要になります。
もし通信DePINが突然停止すれば、利用者は通信できなくなります。
ストレージDePINで障害が起きれば、保存しているデータへアクセスできなくなる可能性があります。
AI向けの計算DePINであれば、GPUネットワークが停止することで、AIサービスそのものが動かなくなる可能性もあります。
さらに、DePINは複数の技術が組み合わさっています。
ブロックチェーン、スマートコントラクト、通信設備、サーバー、ウォレット、トークンなど、どこか一つに問題が起きるだけでも全体へ影響が広がる場合があります。
また、スマートコントラクトのバグやサイバー攻撃によって、資金やデータが失われるリスクもあります。
だからこそ、社会インフラを目指すDePINでは、「速い」「安い」だけではなく、止まらないこと、障害から復旧できること、セキュリティが高いことが非常に重要です。
長期的なプロジェクト評価では、過去の障害履歴や復旧体制、ネットワークの分散性なども確認しておく必要があります。
「DePINだから伸びる」と考えてはいけない理由
DePINは今後、大きな成長テーマになる可能性があります。
しかし、DePINというカテゴリーそのものが成長することと、個別プロジェクトが成長することは別です。
これはインターネットの歴史でも同じでした。
インターネットは社会を大きく変えましたが、当時存在していたすべてのIT企業が成功したわけではありません。
AIも同じです。
AI市場全体が成長しても、すべてのAI企業が利益を出せるわけではありません。
DePINも同じで、テーマとして成長しても、競争に負けるプロジェクトや、利用者を集められないプロジェクト、トークン設計に問題があるプロジェクトは淘汰される可能性があります。
だから僕は、「DePINだから将来性がある」という判断ではなく、実需、売上、競争力、技術、規制、トークノミクスを総合的に見ることが大切だと考えています。
新しいテーマが注目される時ほど、期待が先行しやすくなります。
しかし、本当に長く残るプロジェクトは、派手な言葉ではなく、時間をかけて実際の利用者と売上を積み上げていきます。
DePINを見る時に最も大切なのは、流行に乗ることではありません。
社会に本当に必要とされるインフラなのか。
この視点を持ち続けることです。

リスクまで見ると、DePINを「次に伸びるテーマ」だけで判断できないことが分かりますね。では、それでもDePINが注目される本質は何なのか。次は、暗号資産の役割そのものがどう変わる可能性があるのかを見ていきましょう。
DePINは暗号資産を「投機」から「社会インフラ」へ変えるのか

これまで暗号資産というと、多くの人にとっては「価格が上がるか下がるか」「どの銘柄が伸びるか」という投資対象としての印象が強かったと思います。
しかし、DePINの広がりを見ると、暗号資産やブロックチェーンの役割そのものが、少しずつ変わり始めているように見えます。
重要なのは、トークンを売買することではありません。
通信、電力、ストレージ、計算能力といった現実世界のインフラを、ブロックチェーン上で記録し、契約し、利用し、支払う仕組みへ変えていくことです。
もしこの流れが進めば、暗号資産は「投機の対象」という見られ方だけではなく、社会の裏側で価値をやり取りする経済インフラとして使われる場面が増える可能性があります。
ここからは、暗号資産が金融分野から現実社会へどのように広がっていくのか、そしてDePINがその変化の中でどのような役割を果たすのかを整理していきます。
これまで暗号資産は金融分野を中心に発展してきた
暗号資産は、もともと送金や決済、資産保有といった金融分野を中心に発展してきました。
Bitcoinは、中央の管理者に依存しない価値移転の仕組みとして注目され、その後Ethereumなどの登場によって、スマートコントラクトを使った金融サービスやアプリケーションが広がりました。
DeFi、ステーブルコイン、NFTなども、広い意味ではブロックチェーン上で価値や権利を管理する仕組みです。
つまり、これまでの暗号資産市場では、デジタル上のお金や権利をどう動かすかというテーマが中心でした。
そのため、一般の人から見ると、暗号資産はどうしても「売買するもの」「投資するもの」という印象になりやすかったのだと思います。
しかし、ブロックチェーンの本質は価格変動ではありません。
誰が何を提供したのか、どの条件で契約したのか、どれだけ利用されたのか、どのように対価を支払うのかを、複数の参加者で共有できることにあります。
DePINは、このブロックチェーンの機能を金融の外へ持ち出し、現実世界の設備やサービスへ接続しようとする流れの一つです。
DePINによってブロックチェーンが現実世界へ広がる
DePINの特徴は、ブロックチェーン上だけで完結しないことです。
その先には、通信アンテナ、サーバー、GPU、ストレージ、センサー、蓄電池など、現実に存在する設備があります。
つまり、DePINではデジタル上の記録と、物理世界のインフラが直接結びつきます。
例えば、通信設備が実際にデータを運んだことを記録する。
ストレージ事業者がデータを保存し続けていることを証明する。
GPU提供者が計算能力を提供した時間を記録する。
こうした現実のサービス提供を、ブロックチェーン上の契約や支払いとつなげることができます。
ここが、DePINの大きな意味です。
これまでブロックチェーンが「デジタル資産を動かす技術」として見られていたとすれば、DePINでは現実世界のサービスや設備を動かすための管理基盤として使われ始めます。
僕は、この変化が進むと、暗号資産市場を見る視点も大きく変わっていくと考えています。
何を発行したのかではなく、何を現実社会で動かしているのかが重要になるからです。
通信・電力・ストレージ・計算能力がオンチェーン化する可能性
DePINが広がると、通信、電力、ストレージ、計算能力といった資源の利用記録や契約が、オンチェーン化していく可能性があります。
オンチェーンとは、取引や契約、利用記録などをブロックチェーン上で扱うことです。
例えば、AIがGPUを30分だけ利用したとします。
その利用時間、料金、支払いまでを自動的に記録できれば、計算能力そのものがオンチェーン上で取引される資源になります。
ストレージも同じです。
どれだけの容量を、どれくらいの期間保存したのかを記録し、その実績に応じて料金を支払うことができます。
将来的には、地域の余剰電力や通信帯域なども、条件に応じて自動的に取引される可能性があります。
ここで重要なのは、何でもブロックチェーンに載せればいいという話ではありません。
処理速度、コスト、規制、プライバシーなどを考えると、すべてをオンチェーン化するのは現実的ではありません。
ただ、複数の事業者や機械が国境を越えて取引し、利用実績を共有し、対価を自動で分配する必要がある場面では、ブロックチェーンの強みが出やすくなります。
DePINは、物理資源をそのままデジタル化するのではなく、現実の利用と支払いをブロックチェーンにつなぐことで、新しい市場を作ろうとしているのです。
暗号資産を使っていることすら意識しない未来
本当に普及した技術ほど、利用者はその裏側を意識しなくなります。
僕たちは普段、インターネットを使う時にTCP/IPという通信技術を意識しません。
クレジットカードで支払う時に、裏側でどのような決済ネットワークが動いているのかを考える人も多くありません。
電気を使う時に、発電所や送電システムの仕組みまで意識することもほとんどありません。
DePINやブロックチェーンも、本当に社会インフラとして定着するなら、同じ方向へ進む可能性があります。
利用者は「ブロックチェーンを使おう」と思ってサービスを選ぶのではなく、安い、速い、便利、安定しているから使うようになるはずです。
その裏側で、通信設備への報酬が自動で分配されている。
AIが計算能力を自動購入している。
データ保存の契約がスマートコントラクトで管理されている。
そうした仕組みが動いていても、一般利用者は気にしないかもしれません。
僕は、この状態こそ本当の普及だと考えています。
暗号資産を使っていることを意識しなくても、裏側でブロックチェーンが価値移転や契約を支えている世界です。
DePINの本当の成功は「暗号資産と呼ばれなくなること」かもしれない
少し逆説的ですが、DePINが本当に成功した時には、「DePIN」や「暗号資産」という言葉そのものが前面に出なくなるかもしれません。
なぜなら、社会インフラとして重要なのは技術の名前ではなく、実際に役に立つかどうかだからです。
通信サービスを使う人は、その基地局がどの企業の設備なのかまで毎回確認しません。
クラウドを使う人も、サーバーの内部構造まで理解して利用しているわけではありません。
同じように、将来DePINが普及すれば、「これは分散型通信だから使おう」ではなく、「この通信サービスが安くて安定しているから使う」という選ばれ方になる可能性があります。
その裏側でトークンやスマートコントラクトが動いていたとしても、利用者にとっては重要ではありません。
僕は、DePINの本当の成功は、暗号資産であることを強く意識されなくても、社会の中で当たり前に使われる状態だと考えています。
これは、暗号資産が消えるという意味ではありません。
むしろ逆です。
技術として十分に成熟し、生活や産業の中へ溶け込むことで、暗号資産やブロックチェーンが「特別なもの」ではなくなるということです。
DePINがその段階まで進めるのかは、まだ分かりません。
しかし、暗号資産を価格だけで見るのではなく、社会にどのような機能を提供しているのかという視点で見ると、これまでとはまったく違う未来が見えてきます。

ここまで見ると、DePINの本質は「暗号資産だから」ではなく、社会で本当に使われるかどうかだと見えてきますね。最後に、この記事で押さえておきたい判断軸を整理しましょう。
まとめ|DePINを見るなら価格ではなく「実際に使われているか」を見る

ここまで、DePINの基本的な仕組みから、AIとの関係、HeliumやFilecoinの事例、L2やモジュラーブロックチェーン、高速L1、そしてDePINプロジェクトを見極めるポイントやリスクまで見てきました。
少し専門的な内容もありましたが、最後に押さえておきたい本質はシンプルです。
DePINを見る時に大切なのは、「どのトークンが上がるのか」という価格から入ることではありません。
そのネットワークは現実社会で何を提供しているのか、誰が使っているのか、利用者がお金を支払っているのか、そして事業として継続できるのか。
この順番で考えることが重要です。
AIの普及によって、計算能力、通信、ストレージ、電力などへの需要が増えていけば、それらを分散して提供するDePINの役割が大きくなる可能性があります。
一方で、「DePIN」という名前が付いているだけで価値が生まれるわけではありません。
最後に、この記事でお伝えしてきた内容を5つのポイントに整理しておきましょう。
DePINとは世界中の設備や資源を分散して活用する仕組み
DePIN(分散型物理インフラネットワーク)の基本的な考え方は、世界中に存在する通信設備、GPU、ストレージ、電力などを、多くの個人や企業が分散して提供し、一つのネットワークとして活用することです。
これまでの社会インフラは、大企業が巨額の資金を投じて設備を所有し、中央で管理する方法が中心でした。
DePINは、その仕組みをすべて否定するものではありません。
むしろ、中央集権型のインフラだけでは効率的に対応しにくい場所や、世界中に余っている設備を活用できる分野で、分散型という新しい選択肢を加える考え方です。
その裏側では、ブロックチェーンによって利用実績や契約を記録し、スマートコントラクトによって支払いを自動化することができます。
つまりDePINの本質は、暗号資産を発行することではありません。
現実世界に存在する設備や資源と、それを必要としている人や企業を効率よく結びつけることにあります。
ここを理解すると、DePINを単なる暗号資産の新しいカテゴリーではなく、次世代の社会インフラを作る一つの仕組みとして捉えられるようになります。
AIの普及がDePIN需要を押し上げる可能性がある
DePINが今注目されている大きな背景の一つが、AI需要の拡大です。
AIが高度になるほど、大量の計算能力が必要になります。
生成されたデータを保存するストレージが必要になります。
世界中へデータを届ける通信回線が必要になり、それらを24時間動かすための大量の電力も必要です。
さらにAIエージェントが普及すれば、人間だけではなくAI自身が計算能力やストレージを利用し、サービス同士で自動的に取引する場面が増える可能性があります。
そうなれば、必要な設備を一部の巨大企業だけで供給するのではなく、世界中に存在する余剰資源をネットワーク化して利用する価値も高まります。
ただし、AI市場が成長するからDePINも自動的に成長するわけではありません。
重要なのは、AIによって実際に生まれた需要を、そのDePINが本当に取り込めているかです。
AIという大きな成長テーマとDePINを結びつける時ほど、期待ではなく実際の利用状況を見ることが重要になります。
重要なのはトークン価格ではなく実需と売上
この記事で僕が最もお伝えしたかったのが、この部分です。
DePINの価値を考える時に、トークン価格だけを見ないことです。
価格は、期待、ニュース、市場心理、流動性など、さまざまな要因によって短期間でも大きく動きます。
一方で、社会インフラとしての価値を見るなら、もっと現実的な数字を確認する必要があります。
実際の利用者は増えているのか。
通信量や保存量、計算資源の利用量は増えているのか。
利用者は本当に料金を支払っているのか。
ネットワーク売上は増えているのか。
そして、トークン報酬を大量に配らなくても事業を維持できる方向へ進んでいるのか。
このような実需と事業収益を見ることが重要です。
もちろん、事業が成長したからといってトークン価格も必ず上昇するとは限りません。事業価値とトークン保有者の価値がどのようにつながる設計なのかは、別に確認する必要があります。
だからこそ、「良いプロジェクトだから価格も上がる」と短絡的に考えるのではなく、事業としての価値とトークンとしての価値を分けて考えることが大切です。
L2・モジュラー・高速L1はDePINを支える基盤技術
DePINが社会インフラとして広がれば、その裏側では膨大な数の取引や利用記録が発生します。
通信設備が利用状況を記録する。
ストレージが保存状態を証明する。
AIエージェントが計算能力を購入する。
機械同士が少額の料金を支払う。
こうした処理が世界中で同時に行われるようになれば、従来のブロックチェーンだけでは処理能力が不足する可能性があります。
そこで重要になるのが、**L2(レイヤーツー)、モジュラーブロックチェーン、高速L1(レイヤーワン)**といったスケーリング技術です。
L2は、メインとなるブロックチェーンの外側で大量の取引を処理し、最終的な結果をL1へ記録する考え方です。
モジュラーブロックチェーンは、取引実行、データ保存、安全性の確保などの仕事を役割分担します。
高速L1は、Solanaのように基盤となるブロックチェーンそのものの処理能力を高めるアプローチです。
方法は違いますが、目指している方向には共通点があります。
大量の利用が発生しても、速く、安く、安定して処理できるインフラを作ることです。
DePINの将来性を見る時には、表側のサービスだけではなく、それを支えるブロックチェーンがどのような技術構造になっているのかまで見ることで、理解がさらに深まります。
焦って投資するのではなく構造を理解することから始める
DePINという新しいテーマを知ると、「では、どの銘柄を買えばいいのか」と考えたくなるかもしれません。
しかし、僕はその順番を逆にした方がいいと考えています。
まず理解したいのは、なぜDePINという仕組みが必要とされ始めているのかです。
AIが普及する。
計算能力、通信、ストレージ、電力への需要が増える。
世界中には、その一方で使われていない設備や余剰資源が存在する。
それらをブロックチェーンによってつなぎ、利用実績や契約、支払いを管理する。
さらに、その大量の処理を支えるためにL2、モジュラー、高速L1などの技術が進化する。
この構造を一本の線として理解してから、個別のプロジェクトを見ることが大切です。
そのうえで、実際の利用者、売上、稼働率、トークノミクス、競争力、規制リスクなどを一つずつ確認していく。
そうすれば、SNSで話題になったから飛びつくのではなく、自分なりの判断軸を持てるようになります。
投資の世界では、未来を100%当てることは誰にもできません。
だからこそ僕は、答えを探し続けるよりも、新しい情報が出てきた時に自分で考えられる「構造」を理解しておくことの方が大切だと考えています。
DePINが今後どこまで社会へ浸透するのかは、まだ分かりません。
しかし、AIとブロックチェーン、そして現実世界のインフラが結びつき始めているという変化は、これからの暗号資産市場を考えるうえで注目しておきたい大きな流れの一つです。

大切なのは「次に何が上がるか」だけを追うことではなく、時代がどこへ向かっているのかを理解することです。ここからは視野を少し広げて、AI時代の資産形成についてさらに学んでいきましょう。
「AI時代の資産形成をさらに学ぶ」

ここまでDePINについて見てきましたが、僕がこの記事で本当にお伝えしたかったのは、特定の暗号資産やプロジェクトの話だけではありません。
AIが普及すれば、計算能力が必要になる。データが増えれば、ストレージや通信が必要になる。そして、それらを動かすためには電力が必要になる。
このように一つの変化から次に起きる変化を考えていくと、バラバラに見えていたニュースが一本の線でつながってきます。
これからの資産形成で重要になるのは、「次に何が上がるのか」という情報だけを追い続けることではなく、技術の進化によって何が不足し、どこに需要が生まれ、世界のお金がどこへ動こうとしているのかを構造で見る力だと僕は考えています。
そしてAI時代は、情報を集める力だけでは十分ではありません。
世界経済、金融政策、暗号資産、AI、企業動向、市場データなど、僕たちが触れる情報量そのものが急速に増えているからです。
だからこそ僕自身も、AIを「答えを任せる道具」ではなく、膨大な情報を整理し、市場全体を俯瞰し、自分自身の判断を支えるための道具として活用しています。
ニュースを点で追うのではなく、点と点をつないで構造を見る。
価格だけを見るのではなく、その裏側で生まれている需要を見る。
そして、人間の感情だけに頼るのではなく、AIも活用しながら判断材料を増やしていく。
これが、僕がこれからの時代に大切にしたい資産形成の考え方です。
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